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冒頭の一文から笑い転げた
東京では1円もかけずに暮らすことが出来る。 こんな街はほかにないよ

今までの常識を覆す発言である
東京に住むには月何万もかかって、おまけに物価が高い
着るものも上質なものを揃えなければあっという間に田舎者扱い
東京で生活をするにはコスト問題がつきまとう

ましてや東京で家を買うとなったら35年と長きにわたるローンは必然だ
そんな東京に、1円もかけずに家を建てた人がいた
それが隅田川沿いにお住まいの鈴木さんだ

本書は大学で建築を学ぶものの普通の建築家にはなりきれなかった「アーティスト」坂口恭平さんが路上生活者の鈴木さんの生態に迫る

この「鈴木さん」という方がものすごい
仙人のように頭が切れて、人間として大変尊敬出来る方なのだ
数多くの路上生活者の中からよくこんな方を引き当てたものだ

鈴木さんの話を聴けば聴くほど、本当の幸せとは何か 人間にとって家とはなんだろうかと思う 

大抵の電化製品は12Vで動くという
食事も3食とって風呂にも入る
電気もつく
ガスも調達している
アルミ缶拾いで生計を立てる
鈴木さんからは、貧しさに困っているようなお涙ちょうだいの話題が全く出ない。
自分が感銘を受けてきたことばかりが出てくる。
1日2度にわたって行われるアルミ缶拾い。
その仕事のみで1ヶ月になんと5万以上の収入を得ている。
つまり、すべて都市のゴミによって得ているわけだ。
鈴木さんは 工夫して暮らすことがとても面白いからこの生活をしていると言っていた
そして、コンクリートの家には住みたくないとも言っていた
これらの言葉は、金銭的な価値を基準にした生活ではなく、人間的な生活を送るために0円生活をやっているともとることができる
都市というところは、その中間が存在しないところなのかもしれない

人はどちらかを選択しなければいけないのだろうか
鈴木さんにはいつもミラクルが起こる
仕事がなくなっても次の仕事が現れる
ある人を助けたらたまたま洋服会社の社長で服を無償でもらえるようになった

それもこれもこの鈴木さんの人間性に、みな惹かれるからなのかもしれない

隅田川の家は1ヶ月に1回完全撤去しなければならない。
そのために、ここの住民達は解体しやすい家を設計している
もちろん、電気もガスも水道も「引いていない」

インフラは、家とつながっているのが当たり前である。
それがこれまでの常識であっただろう。
しかし、それは便利ではあるが、災害が起きた時は、住宅が破損するだけではなく、二次災害までもが襲ってくる
家を壊してまた直すという作業が2時間弱で終わるというのも注目すべき点である
4、5、6章は著者である坂口恭平の生い立ちから、0円ハウスまでに至るまでを述懐する 
この方も小学生の頃からすでに人と違うことをしでかし、頭角を現しているから面白い 
漫画を書いて製本したり 、ゲームのドラクエをアナログで制作する 

大学の選び方もどこか運命的だった
僕は会いたい人を見つけることの方が、行きたい大学をみつけることなどより数倍力があることを知った。
形はどうでもいいのだと。直感や本能、皮膚感覚に従うことが偶然を呼び起こすんだ

大学に入ってからも建築学科なのに「貯水タンクに棲む」という映像作品を作る 
それって園子温みたいじゃないか 

早稲田大学の建築学科といえば「役に立たない機械」の課題でお馴染み。
そんな早稲田で卒業論文として認められたのが「0円ハウス」である
0円ハウスに収録されている無名建築家による作品群のバックグランドを知りたければ本書を読めばいい。

ここでは決して彼らを「ホームレス」とは言わない
だって聞けば聞くほどちゃんとした「家」なのである。
例え違法建築であろうと、れっきとした「マイホーム」なのである


本書に登場する無名建築家たちの中には、自分にとって必要最小限の空間を模索しながら家を建築するものもいる
普通の建築物は設計図があって、それに従って建築する
そして出来あがったら人間はその空間に「適応していくしかない」

つまり、無名建築家の設計方法は今までの建築方法と全く逆行する流れなのだ

写真集0円ハウスは日本での反応は薄いらしい
でも海外では評価されている。
真のアートとはこうなんだと思う。

私はものすごく面白いと思った。

隅田川に家を建てるという行為は許されているものではない。
しかし鈴木さんの家を調べれば調べるほど、なぜこの生活が許されず、周りには巨大な建築物が建っていくのか、正直わからなくなっていった。
なんだろう、この矛盾は。
どうにかならんものか。
新しい視点はありえないのか。

文章から路上生活者「鈴木さん」は、今をものすごく楽しんでいるし、幸せな暮らしをしているのだと思った。
0円の家に住んでいるのに。
住所不定無職であるのに。

どうしてか、
家もあって、仕事もある、「普通の暮らし」をしている人よりも、ずっと自由で楽しそうなんだ


自分の中の「常識」が覆される
そして幸せとはなにかと思う。

35年もローンを組んで手に入れるキラキラマンション生活も、相応に幸せだろう
でもお金なんかなくても幸せに暮らせる道がある

多くの人に読んでもらい、知ってほしい
将来路頭に迷った時はこれに従って家を建築すればいい

防災セットに一緒に入れておきたい名著でした




▼卒業論文 「0円ハウス」の感想はこちら

【アングラ写真集】0円ハウスに見る日本住宅建築の多様性 : じょなさんぽ






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