ジャンプ写真集といえば青山裕企のソラリーマン

でもジャンプをもっと極めて「浮遊」の域まで持っていって自己表現しているのが林ナツミさんである

そんな彼女の「浮遊」が詰まった「本日の浮遊」は非日常な不思議写真だらけ



青山裕企さんに感化されて、私もジャンプ写真を撮ってもらったことがある
他人に撮ってもらう時、その人との息がぴったり合わないと、素晴らしい写真作品は生まれない
ぶれたり、着地してしまったり、スカートが危うい形になったり、何かとトラブルがつきものだ

ジャンプ写真でさえそうなのだからさらにシャッターチャンスがほんの一瞬である浮遊写真を撮ることは相当にしんどい作業であると推測できる

事実彼女は巻末で、たった1枚の写真のために何百回も跳んだと語っている


彼女には優秀なカメラマンがついている
写真の師匠である原久路さんだ

撮影のシャッター速度は基本的に500分の1
ジャンプの滞空時間は1秒
その間500回のシャッターチャンスがあることになる
でも「浮遊」しているようにに見える瞬間はほんのわずかである

本書に収録されている浮遊写真は何回も跳んで、何回も撮った
よりすぐりの写真たちばかりなのだ

日記形式というスタンスで綴られるこの写真集は、日常を非日常に変換する
普通だったらなんでもない景色の中で跳ぶ
一瞬の浮遊を捉える
するとたちまち日常が、非日常になる

待ちゆく通行人や、その場その場のアイテムを取り込むのがうまくて、さらに不思議な世界観を演出している


彼女は何故浮遊するのか。

それは幼い頃から地に足のつかない子供だったから
大人になっても地に足のつかない写真を撮っているのだという

ただのジャンプ写真はどこにでもある
それを浮遊まで昇華させるとアートとして突き抜ける。
自己表現に繋がっているのならば、なおさらだ。

初めての場所に限らず、そこで撮ると決めてから撮影開始までの時間はすごく緊張します。
撮影を始めてしまえばふっきれるんですが・・・。
いつも逃げ出したい気分に駆られます
毎回やっていることなのに慣れませんね
周りに人がいない場所でもそうです

常に緊張しながら、でもやっぱり撮りたいので、なんというか引き裂かれるような心境です(笑)

私が廃墟や死体や蟲や血やグロを撮る時と全く一緒の感覚だったのでびっくりした。
そう、いつも逃げ出したい衝動に駆られる。
こんなの撮っていいんだろうか・・・と不安がよぎる。
廃墟なんか特に、自分というものが試される。
それなりに怖いし、もう次は絶対行かないと決意する。
でも数日経つとまた行きたくなる(きっと学習能力がないのでしょう)


たった1枚の浮遊写真を撮るために一体どれほどの労苦が必要なのか
ぜひとも手に取って、巻末のインタビューを一読いただきたたい


▼おもしろ写真ばかりです







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